「もっと楽をしたい」が開発の原動力
長年くすぶっていた不満がアイデアに昇華。
私は横着な性格で、「もっと楽して仕事しよう」を信条にしています。仕事の手を抜こうということではなくて、工夫して回避できる苦労があるなら、効率よくしようよ、ということです。
例えば、オオコウ電設が初めて開発した「キャタグルマ」着想の背景には、若い頃に経験した苦労がありました。現場作業に必要な物は一度にまとめて運べば済むものを、何往復もして運ぶ面倒くささ。もっと横着がしたい。ささいなことですが、長年くすぶっていた不満がアイデアにつながったのだと思います。
「キャタグルマ」開発までは、およそ20年を要しました。当時は会社を起こしたばかりで、自社製品開発にかける資金的余裕がなかったことが、製品化まで時間がかかった大きな理由でした。
今は新事業に注力する余裕が生まれ、短い期間で「キャタグルマ」「電伝むし」を生み出すことができました。
今後は、現在の会社から開発部門を分けて新しい会社を設立し、現在のオオコウ電設の主要事業である設備工事と同様に盛り立て、意欲的に取り組んでいきたいと思っています。
日常の中にヒントを見つけ、思いをカタチに。
私はいつも「いいアイデアはないか」とあちこちに目を向けています。最近は車の助手席に乗ることが増えました。運転している時は気づかなかったことを流れる景色の中に見つけては、「あれいいな、これもいいな」と注目しています。それは買い物をしていても同じで、例えば100円ショップはいろんな便利グッズが続々と登場してアイデアの宝庫です。そういうのを見るにつけて、便利なものをつくろうと考える人はよく考えているし、考えるだけでは終わっていないのだと実感します。
私自身、「こういうものがあったらいいな」と思いつけば、何でもすぐにつくりたくなる性分で、自分が考えてつくり出したものが形になっていく過程がとても楽しいのです。
思いついたアイデアを自分の中だけに留めておくのはもったいない。形にする方法がわからなければ、まずは誰かに相談してみてほしいです。行動に移していけば、ヒントを持っている人に出会えるかもしれません。
形になったものが世の中に出て、便利に使ってもらえると思うとうれしい。また、開発を進めていく中で、発想が当初の想定を超えて思ってもみないところにまで波及していくこともあり、ワクワクします。そういう楽しみを糧に、製品開発に打ち込んでいきたいと思っています。
主な開発事例
子どもの幼稚園の行事での思いつきから生まれた1台3役の立ち馬。
オオコウ電設最初のオリジナル製品となった「キャタグルマ」は、特許取得後2022年に本格的に開発がスタートしましたが、その始まりは約20年前の社長の思い付きでした。
「子どもの幼稚園の行事で、写真撮影ができて、荷物を運べて、お弁当を食べるテーブルにもなる脚立があればいいのに」。
当初は子どもの学校行事、海水浴やキャンプといったアウトドアなど、一般家庭での使用を想定していましたが、地元のテレビ局とのつながりから、テレビクルーや新聞記者の取材撮影時の使用も考慮し、足場台の上に三脚を設置できる幅に、立ったままPC作業ができるよう脚を伸縮可能にするなど、改良を重ねました。
また、近年は脚立使用禁止の工事現場が増え、立ち馬の使用が推奨されています。キャタグルマは、大手脚立メーカーの脚立を仕入れ、「オオコウブランド」オリジナル製品として開発しました。あらゆる用途、場所での使用に耐え得る高品質で安心安全な製品に仕上げています。
練習用の電線で、技術取得支援や雇用創出に貢献。
電気工事士の資格を取得するためには、電気工事士試験に合格しなければなりません。学科試験はテキストや問題集で学習可能ですが、技能試験は実際に電気工事で使用するケーブルを用いて練習する必要があり、繰り返し練習することが習得のカギです。
しかし、ケーブルは芯線が銅線で、練習のためだけに使用するのはためらわれるほど高価です。
私たちは、電気工事士試験を受験される方々にこのような困りごとがあると知り、実際のケーブルより安価な練習用ケーブルを開発しています。
ケーブルに銅線が用いられるのは銅の電気伝導率が高いためですが、練習用であれば電気を通すことはないため、銅である必要はありません。そこで、私たちは銅よりも安価な鉄線のケーブルをつくることにしました。銅と比べて鉄は硬いのが難点ですが、炭素量を調整することで、銅線と遜色ない硬さの芯線に仕上げることができました。（※本番の銅線での作業を容易にするため、銅線よりもやや硬めに設定）
現在、製品化に向けてテスト試験を重ね、特許出願中です。今後、この練習用ケーブルが製品化することで、独学で電気工事士を目指す受験者や工業系の生徒・学生が、消耗品である練習用ケーブルのコストを気にすることなく、いつでも手に取って繰り返し練習できるようになるでしょう。電気工事士を志す多くの受験者の役に立つことを願って、鋭意開発中です。
また、この製品を地域の雇用創出にもつなげていきたいと思っています。練習用ケーブル販売のためのケーブルカット、袋詰め作業に外国人労働者や福祉作業所などへ積極的に依頼することで、就労機会の拡大に貢献するアイテムになると考えています。
